目次

この物語は、投稿日が古い記事から始まります。

スライドするのが大変と思うので、この目次ページを活用ください。

1 未来からの警告者

2 過去――あの肉を食べるまで

3 現在――遠い国の食料事情

4 未来――次世代へのツケ

5 パラレルワールド

6 すべてと調和した未来文明

7 エピローグ

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エピローグ

 

「結樹、今日は焼き肉屋いかないの?」

 明日香が珍しそうに訪ねる。心配そうな表情からは、僕が何か悪いものを食べたのではないか、という思いが読み取れる。

「今日は僕の部屋でランチする」

「え、結樹って料理できるの!?」

 目をむいて驚く明日香。まあ、確かに今まであまり自炊していなかったけど……。

 

「すごーい、これ、全部つくったの!?」

 家に招いた明日香が、嬉しそうに驚いた。

 メニューは、オムライス、レタスを付け合わせたポテトサラダ、そしてオニオンスープだ。

「インターネット見ながら作ったんだ。最近、けっこう自炊している」

「ねえ、早く食べようよ!」

 明日香に促されて、二人で食べ始めた。

「おいしいじゃない、結樹、すごいよ」

「ありがとう」

「あれ? これってお肉入ってないね?」

「うん」

「どうしたの? もしかしてヘルシー志向に目覚めた?」

「そうだね、自分の体と、子孫のために肉はやめようってね」

「え、何それ?」

 きょとんとして尋ねる明日香。でも、今はまだ教えない。次の世代が生まれたらにしようかな。

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すべてと調和した未来文明

 あれから百年後の未来に連れてきてもらった僕は、目を疑った。到着した小高い丘から見た東京は、自分が想像していたものとはまったく違ったものだったのだ。

 まず、高層ビルがない。いや、まったくないわけではないが、目に見える範囲では二棟しかない。その他は、二階建てなのだ。

 それに、自然も多い。まるで、大自然の中に、都市がうまく融合したような感じだ。

「じゃあ、少し散策してみようか」

 結衣に促されて、僕たちは歩き出した。

 

 池袋界隈を歩くと、いくつも屹立していた高層マンションがなくなっている。その替わりに並ぶのは、木造の建物だ。どれも屋根に太陽光発電パネルを取り付けている。

「木造にして環境に優しいのかな? 木を伐っているんだろう? あと、コンクリートの方が長持ちするし」

「それは正しい情報じゃないわ」

 結衣の説明によると、使われている木材はFSC認証を受けたものだけだという。FSCとは、伐った後にまた植樹をして、森林資源が絶えないようにすることを国際的に認めるものらしい。つまり、FSC認証の木材を使うことは、若い森林を育成することにつながり、二酸化炭素の吸収も強いのだ。

 さらに、木は古くなると、二酸化炭素の吸収力が弱くなる。その代わりに、木材になったとき、樹齢と同じだけの年月は持つらしい。端的に言うと、樹齢百年の木は百年間木材として持つのだ。

「調達するのも、関東近県の森林からよ。その土地で育った木が、その土地で木材として使うと相性が良いの」

 ちなみに、コンクリートの強度はおおよそ五十年前後らしい。

「そういうことも大学で学んでいるんだね」

「ううん、これは宮大工の知恵よ。独学で本を読んだの」

「宮大工って、寺や神社を建てる大工のこと?」

 百年後の未来でも、伝統的な職人が生き残っているのか。

「というより、この時代は宗教を信仰する人が増えたの。だから、礼拝のための神社仏閣も当然増えたのよ。よく見て、キリスト教会やイスラームのモスクもあるでしょう?」

 イスラームは詳しくないけど、キリスト教会はすぐに目に留まった。白い壁にステンドグラス、屋根の十字架があったからだ。

 教会なんて、キリスト教系の幼稚園や大学でしか見たことがないからなあ。

「小学校でも、宗教学の授業があるくらいよ」

「へええ」

 僕には意外に感じられた。宗教は古い時代に栄えたもので、二十一世紀の初頭を境に、廃れていくものと思っていたのだ。

「ね、ラウタード・シって知っている?」

「何それ?」

「キリスト教カトリックのローマ教皇が、信徒や世界の人々に向けて出した書簡よ。二〇一五年、時のフランシスコ教皇が、『自然は神の被造物で、人間はそれを、責任を持って管理する使命がある』と声明を出したの」

 その頃から、宗教界における環境保全活動が加速し始めたそうだ。

それにしても、僕が生きる時代の東京と全然違う。街並みが違うだけでない、空気というか、とても澄みきっているのだ。

「自然が増えて大気がきれいになったのもあるけど、みんなが祈っているからね。それもあると思うわ」

 

 僕らは、近くのカフェに入った。木製の内装が温かい店だ。

「この時代のごはん、食べてみてよ」

 結衣はメニュー表を出してくれた。そこには、見慣れた名称の見慣れない形容詞があった。

「アフリカ応援フェアトレードコーヒーって?」

「正当な対価を払って収穫されたコーヒーってこと。百年前は、途上国の人たちを搾取するように働かせてコーヒーを栽培していたから激安だったと思うけど、この時代はこの値段よ」

 一杯が六百円……ぼったくりではないか?

「だから、これが正当な対価だって。以前は安すぎたのよ。その代わり、日本で手に入る原料のメニューはけっこうお手頃よ」

 抹茶オレにほうじ茶……こちらは二百円だった。

「ところで何か食べてみてよ。ハンバーガーセットなんてどう?」

「肉を使っていないのか?」

「うん」

 どんなものだろう、気になる。ということで、結衣と注文した。

 

 しばらくして出てきたのは、ファーストフードで見るものより、少し大きめのバーガーだった。

「食べてみて」

「うん、いただきます」

 頬ばってみると普通の肉の食感である。が、何か動物のような臭みがない。

「このパテ、大豆が原料なの」

「へえ!」

 オーガニック志向の人が、肉の替わりに大豆ミートを食べるのは聞いたことがあった。この時代では、それが当たり前なのか。

「メニュー表を見て。唐揚げ、カツサンドもあるけど、全部大豆なの」

 これなら肉がなくても良いなあ。しかも、環境破壊も少なく、体にも良い。

「これ食べたら連れていきたいところがあるの、いいかな?」

「うん」

 バーガーを食べながら僕は頷いた。改まってなんだろう?

 

 結衣が案内したのは小さな教会だった。

「さっき、この時代の人は信仰を持つって言ったわよね。私もそうなの」

「クリスチャンってこと?」

「うん」

 結衣は、教会の扉を開けた。

「え、勝手に開けていいのか?

「この教会は礼拝専用なの。自由に入って祈れるのよ」

 中には小さなベンチが四脚。正面には十字架がしつらえてあった。

「家から近いから、よくここに来て祈りを捧げるの」

 結衣は、十字架の前で手を組み、目を瞑った。

 それにしても……。

「結衣、何故キリスト教の信仰に? 神社や寺だってあるのに……」

「さっき言ったように、ローマ教皇の回勅に感銘を受けたから。それと……」

 胸元から、そっとネックレスを取り出した。そこには十字架があった。

「これね、おばあちゃんの形見の十字架なの。おばあちゃんも、さらにそのおばあちゃんからもらったんだって。特に信仰があったわけじゃないみたいだけど、私はキリスト教に縁を感じたの」

 はて、その十字架、どこかで見たような……。

「僕が明日香にあげたもの!?」

「そう、私はあなたの玄孫よ」

 ようやく合点がいった。明日香にそっくりなのは、血がつながっているからだったのだ。

「昔、地球環境が悪化して大変だったみたいだけど、『このままではいけない』って気づいた人たちが立ち上がったの。そのおかげで、私たちは自然と調和した文明の中で生活しているわ」

「でも、もし間違えたら、さっきのパラレルワールドみたいになってしまうんだね」

「うん」

 どちらの世界を子孫に託したいか……そんなことはもう是非に及ぶものではなかった。

 

 僕は結衣のタイムマシンに乗り、現在に戻った。

「結衣、ありがとう。有意義なタイムトラベルだったよ」

「うん……それじゃ、いくね」

 去り際に結衣はこう言い残した。

「人間の文明って、全てと調和できるんだよ。だから、がんばってね」

 彼女は、未来に帰っていった。

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パラレルワールド

「こ、これは……」

 僕は息をのんだ。

眼前が、どこまでも続く荒野なのだ。地面は割れ、草木がまったく生えていない。

そして、異様なのは地上だけではない、空の色も不自然だ。まるで、工業汚水をそのまま気体化したような……。

 さらに言うと、人影もなく、建物は土台だけが残っているもの、鉄骨がむき出しになっているものしかない。世界規模の戦争でもあったのだろうか……。

「ここ、人類が肉食を続けた結果の世界ね」

「こ、こんなにひどくなるのか?」

「飢餓を引き起こして、途上国の不満を買った。おまけに、温暖化で海面が上昇して、陸地が狭くなって、領土争いもひどくなった……私も初めて見たけど、想像以上ね」

 二〇六〇年となると、自分の子供は成人している頃だろう。無事でいるのだろうか?

「う……」

 結衣が苦しそうにうめいた。どうしたんだ?

「空気が悪いわ、早くタイムマシンに乗ってここを抜け出しましょう。たぶん、防塵マスクか何かをつけていないと、三十分と持たないわ」

「……確かに」

 僕も息苦しさを感じる。こんなところでくたばるわけにはいかない!

 

 タイムマシンは、少し離れたところにあった。辺りが荒野で、障害物がないのが幸いだった。

 しかし、意外に遠い。いや、普通なら十五分でたどり着くような距離だろうが、空気が悪くて体が思うように動かない。何だか頭もぼうっとしてきた。

「まずい……もう二十分になる」

 のんき者の僕もさすがに焦り始めた。結衣はだいぶ苦しそうだ。このままでは、取り返しのつかないことになるかもしれない。

「はあ、はあ……」

「結衣、僕の肩につかまって」

 肩を貸してやれば、結衣は何とか歩ける。

「うっ?」

 足下を何かが通り過ぎた。目で追ってみると、見たことのない生き物だった。大きさはセントバーナードくらいで、大きな耳は血管が浮き出て、目は赤々と光っている。細いしっぽの先は、珊瑚のように枝分かれしていた。

「あれ、ねずみだと思う……」

「ねずみ!?」

「原発事故が相次いで、遺伝子が狂ってしまったのよ。二酸化炭素を出さないエネルギーって注目されてたくさん作られたけど、その代償があれよ」

 もはや言葉がなかった。一歩間違えれば、こんな未来が待っているなんて……。

「はあ、はあ……」

「結衣、しっかり」

「私を置いていって……」

 な、何言っているんだ? そんなことしたら死んでしまう!

「あ、あなたが死んだら、未来に影響が……」

 確かに、明日香とも結婚できないし、子供も生まれなくなる。

「結衣、結衣!」

 意識がなくなったようだ。どうしよう、置いていくか……そうすれば自分は助かる。そんな自分本位な考えが頭をよぎった。

「だめだ、一緒に行くぞ!」

 僕は結衣をおぶって、力を振り絞って歩き出した。

こんな世界になってしまったとしたら、それは僕の世代の責任だ。そのツケを、未来世代の結衣が背負うことになる。

さっきの自分の子供だってそうだ。自分が次世代のことを考えて生活すれば、あんな雪の中で寒さに震えることもないんだ。

「結衣、ごめんな」

 頭がぼうっとしてきた。だけど、タイムマシンまであと十メートルだ。最後の力を振り絞って、ようやく乗り込んだ。

「結衣、タイムマシンに戻れたよ、早くこの世界から出よう」

 命に別状はないようだけど、意識がまだ快復しない。

 でも、この空気の悪い世界から早く脱出しないと危ない。

 仕方ない。見よう見まねだけど、操作してみよう。

「この液晶、数字四ケタが焼き付いている」

 たぶん西暦を入力するんだ。となると、その横にある液晶は、月と日付だ。

 さらに、その上にある赤いボタンを押すと、機械が作動した。電源みたいだ。

「数字を入力するのはどのボタンだ……」

 適当に押したら液晶が光った。そこには、2114、10、30と出た。そして、青いボタンを押すと、タイムマシンが動きだし、荒野の時代を抜け出した。

 

「結衣!」

「ん……」

「よかった、気がついたか」

「ここは?」

「タイムマシンの中だ。どうにか君を背負ってたどり着いたんだ。で、適当にボタン押したら動いた」

「え、ちょっと大丈夫だったの!?」

 結衣はがばっと跳ね起きて、慌てて機械を調べた。素人が精密機械をいじったのだから、当然の反応だろう。

「分からん。ただ、あのままあの時代に残るよりはマシだろう」

「ああ、良かった。私の生きる時代に向かっていた」

「え、じゃあ、ずっと未来に?」

「ここまで見せるつもりはなかったけど、せっかくだから、百年後の未来も見せてあげるわ」

 こうして、タイムマシンは、僕らを百年後に連れていった。

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未来――次世代へのツケ

「何ぐったりしているのよ」

 タイムマシンを操縦しながらあきれる結衣。

「そりゃ、ぐったりしたくもなるさ」

 今まで自分が好きで食べてきた焼肉。それが、動物はもちろん、発展途上国の人たちをも苦しめていたとは……。

「まだ焼肉食べたい?」

「うー……」

 返答に詰まった。確かに、食べるのに罪悪感がある。しかし、野菜は嫌いだし、今年二十歳を迎え、今さら食生活を変えられるのだろうか。

「煮え切らないわね。それじゃ、とどめをさしてあげる」

「ま、まだあるのか!?」

「次は未来よ。十年後くらいのね……」

 

 たどり着いたのは、薄暗い無機質な廊下だった。タイムマシンから降りて壁を見ると、眼科、小児科といったプレートが目に入った。

「ここは病院?」

「そう。東京都内の総合病院よ。時間は、午前四時頃ね」

 結衣は、こんなところに来て何を教えようとするのか。病院だけに、人間の解剖を見せられ、その肉を食べるなんてことに……。

「あれを見て」

 結衣が指差したものは、産科のプレートだった。進んでいくと、LDRという部屋にたどり着いた。

「くうぅあぁあ……!!」

「な、何だこの絶叫は……」

「妊婦さんが陣痛に耐えているところよ」

 それにしてもすごい声だ。LDRの引き戸をそっと開けてのぞくと、妊婦がいた。他には、産科医や助産師らしき人と、不安そうに妊婦の手を握る男性がいる。

「くうぅああ!!」

「旦那さん、奥さんを励ましてあげて」

「明日香、もう少しだ、がんばれ!!」

 男性が妊婦を励ます声を聞いて、首を傾げた。

「あれ?」

 薄暗いが、よくよく目を凝らしてみると……顔立ちといい、背格好といい、自分ではないか!!

 しかも、その奥さんは……先ほど、「明日香」と言っていたな。ということは……。

「あなたは、今の彼女と結婚して、十年後に子供が生まれるってことね」

「………」

 なんと、明日香と結婚することが分かってしまった。嬉しいのだが、楽しみを先取りしてしまったような……。

「赤ちゃん、生まれます!」

 助産師が叫んだ瞬間、大きな産声が聞こえた。

「おめでとうございます! かわいい男の子ですよ!」

 どうやら無事に生まれたようだ。その赤ちゃんは、体重測定や検査などをされてから、母親……明日香の胸元にそっと置かれた。

「かわいいね、僕らの子だよ。明日香、がんばったね」

「ありがとう」

 夫婦、そして生まれたばかりの赤ん坊が織りなす感動のひとときは、僕の胸に迫ってくるものがあった。

「あのさ、水を差すようで悪いけど、このあとちょっと大変なことになるの」

「え?」

「時間を少し早めて、五日後に行ってみようか」

 結衣は、リモコンらしきもののダイヤルを回した。

「一週間くらいなら、タイムマシンを使わなくても、このリモコンでタイムトラベルできるの」

 

 到着したのは、例の病院だった。特に何も変わっていないような……。

「違いは窓の外にあるわ」

 結衣に促されて、僕は窓の外を見た。

「わっ、すごい雪だ!」

 見える景色が、一面銀世界だった。灰色の空から雪が降り積もり、ざっと見ただけでも一メートルは積もっている。

「東京でこんな積雪、見たことないよ」

「こんな雪の中、あの親子は退院しなければならないのよ」

 ふと下を見下ろすと、未来の僕らが、豪雪の中を歩いている。

「な、何もこんなときに退院せんでも……」

「まあ、母子ともに健康だから、病院においておくことはできないのでしょう」

 それにしても、どうやって帰るのだろうか? 気になるので後を追ってみた。

 

 親子は、バス停まで来ている。

「さ、寒いね……」

「タクシーが回せないっていうのは困ったね」

 そんな会話が聞こえてきた。

 東京でも、冬に雪が積もることはある。しかし、一メートルの積雪はほとんど経験がないから、交通機関も麻痺しているのだろう。

「バスはちゃんと来るんだろうか?」

 さすがに心配になってきた。大人であっても耐えるのに必死だと言うのに、新生児を連れているのだ。このままでは、風邪をひきかねない。

〈お客様にご連絡します〉

 バス停のアナウンスが聞こえてきた。どうやら、やっと来るようだな。

〈ただいま、雪の影響で、運行が一時間ほど遅れております。お急ぎのところ、大変ご迷惑をおかけします〉

「え!?」

 一時間!? バスは一体いつ来るのか!? 

「こんなことしていたら赤ん坊が死んでしまう!」

 僕は思わず駆け出した。あの親子の力にならなければ。

「ちょっと!」

 結衣が叫んで止めようとしたが、そんなことにかまっていられない。

「あの、そこの人!」

 未来の僕らにそう呼びかけたが、彼らが僕を振り向いた瞬間、目の前が真っ白になった。

「え?」

「ちょっと、勝手なことしてもらっては困るわ。過去、現在、未来の当人同士が会うことはできないの。そうしようとしたら、時空がゆがんでしばらく動けなくなるんだから」

 少しむくれる結衣。

「結衣、何であんな大雪になったんだ!?」

「温暖化のせいよ」

「温暖化!?」

 それはおかしい。地球温暖化は、大気中の二酸化炭素が増え、地球規模で温室のような現象が起きることと聞いた。それなのに、その逆の大雪とは!?

「あのね、温暖化が加速すると、気温の振幅が激しくなるのよ。暑いときは極端に暑く、寒いときは極端に寒くね」

 さらに、結衣はこんなことも教えてくれた。あの大雪は、温暖化により、北極の極渦が崩れたからだという。

「極渦って?」

「北極や南極にある大気の渦よ。普通は、極地の寒さで渦が停滞しているんだけど、温暖化のせいで、その大気の渦が温まって、低い緯度まで寒波となって流れてきたの。二〇一六年の冬は、日本じゅうで大寒波に襲われて、沖縄でも三~四十年ぶりの雪が観測されたわ」

 さらに、その寒波はアメリカの東海岸にもおよび、ワシントンでも交通網が麻痺したらしい。

「自動車や火力発電の出す二酸化炭素が、そんなに増えているんだね」

「ちょっと違うわ」

 結衣はあっさり否定した。

「一番二酸化炭素を出すのは、実は肉食産業なの」

「はあ!?」

 肉食と二酸化炭素がどう関係があるんだ?

「肉食が増えれば、その分、多くの家畜を飼うために広い土地が必要よね? それって、どうやって作ると思う?

「……森林を伐採する?」

「そう、そのために、大気中の二酸化炭素を吸収する力が弱くなって、温暖化が加速しているの」

 食事は毎日することだから、温暖化を進める食生活が積もり積もれば大きな力となっていく。自分一人くらい、食事を変えても何にもならない……人間全員が考えていると、結局、二酸化炭素を減らせないのだ。

「これでわかった? 今の食生活を変えないと、自分の子どもを苦しめるのよ」

「………」

 ぐうの音も出なかった。

「あ、そろそろ時空のゆがみを出るわよ」

「どこに出るんだ?」

「この分だと、パラレルワールドに出るかな」

 パラレルワールド? 今の世界と並行した、まったく別の世界のこと?

「二〇六〇年頃ね、とりあえず出てみましょう」

 僕らは、大きな光に包まれ、やがて二〇六〇年にたどり着いた。

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現在――遠い国の食料事情

 次にたどり着いたのは、殺風景な大地にある集落だった。

「ここは?」

「中央アフリカ共和国よ」

 中央アフリカ? どこかで聞いたことがあるな。

「この時代、クーデターによる政権交代が続いて、内戦が長引いているのよ」

 思い出した。明日香と焼肉を食べたときに、ニュースで報道していた国だ。

「残酷な独裁者、無能な政府。あと、キリスト教徒とイスラム教徒の対立も根深いわ」

 

 集落を散策してみた。銃やナイフを持った男たちが睨みをきかせている。外敵から自分や家族を守るためだろうか。

 そして、目を引いたのは、痩せ細った子供たちの腕だった。二の腕の直径が、赤ちゃんの手首よりも細いのだ。アフリカの飢餓状態が深刻とは知っていたが、まさかこれほどとは。

 一人の男の子が、何かを持ってきた。その弱々しい手には、インスタントラーメンがあった。男の子は、その袋を破いて、中から麺を出して、半分に割ってボリボリと食べ始めた。もう半分は、近くにいた小さな女の子に渡された。妹だろうか? その女の子も、同じようにボリボリと食べ始め、粉末のスープは、粉薬のように飲んでしまった。

「なんで、あんな食べ方を……」

「食料の援助はされても、食べ方まで教えてもらえなかったのよ」

「内戦が長引いて、飢餓が蔓延しているんだな」

「逆よ」

 結衣は僕のつぶやきを否定した。

「内戦が長引いて飢餓になっているというより、飢餓が続くから内戦が長引いているの」

 どういうことだ? 普通は、戦争で食料を軍隊に取られるから、飢餓になるのではないのか。

「あなた、もし明日食べるものがなかったとしたら、どうする?」

「え? コンビニに買いに行くけど」

 少し、あきれた表情をする結衣。聞きたいのはそういうことではない、とでも言いたげだ。

「コンビニにもスーパーにも食料がない。おまけにお金もない、ATMも止まってお金がおろせない。自分の家の近くには農家もない。そんな状態で、限りある食料がきたらどうなる?」

 きっと取り合いになる。それは僕にも容易に想像できた。

「その取り合いが拡大したのが戦争よ。戦争は、主義思想の対立から始まると思われているけど、実際は、貧しさが引き金になっていることが多いのよ。こんなふうに、飢餓が蔓延すると、『何故自分たちがこんな目に合わなければならないんだ』って考え方が出てくる。そこで、一部の人たちが裕福な暮らしをしていると知らされたら、不満は一気にそっちに向けられる」

 彼らのために何かできないのだろうか? 飢餓で苦しみ、裕福な人に憎悪を向ける人生なんて、むなしすぎる。

「あなたにもできる援助はあるわよ」

 僕の心を見透かしたように、結衣はつぶやいた。

「肉を食べないことよ」

「え?」

 何故、僕の食生活が関係あるのか?

「過去にタイムトラベルしたとき、牛が不自然に太らされていたのは見たでしょう? 家畜を太らせるためには、どうする?」

「そりゃあ、たくさん餌を与えるよね」

「そう、牛を一キロ太らせるのに穀物が八キロ要るのよ。豚が四キロ、家禽が二キロってところね。じゃあ、単純に考えて、その穀物を飢餓で苦しむ人たちに回したらどうなる?」

「……飢餓は減っていく」

「減るどころじゃないわ。地球上の飢餓全てが解決するの」

「え!?」

 今、全てと言ったのか?

「この時代の地球は、人口増加で穀物の生産量は頭打ちになったと言われているけど、七十億人の食料をまかなえるくらいは作れるのよ」

 

 僕は、結衣の説明を聞いて、飢餓と戦争のメカニズムを知った。

 僕のように、先進国にいる人間が、肉食をする。家畜を育てるためには、たくさんの穀物が必要で、それを畜産業に充ててしまう。発展途上国は先進国より貨幣価値が低いから、穀物を買う経済力もない。それに、外貨も稼ぎたい政府は、飢餓に苦しむ国民を無視して、自国で生産した穀物を、先進国に売ってしまうのだ。

 本来なら、自分たちで作った作物を食べるはずが、肉を食べる人のために奪われてしまうのだ。

 焼肉屋でおつりを募金したことが、脳裏をよぎった。これでは、いくら募金しても焼け石に水じゃないか!

「これでようやくお分かりいただけたかしら? さらに、この時代から発達してきた技術によって、戦争はより複雑化してきたわ」

「技術?」

「あれを見て」

 結衣が指差した方には、スマートフォンを持った青年がいた。彼は、画面をしばらく見ていたが、やがて、その顔には憤怒の表情が浮かんできた。

「発達したインターネットによって、世界中のどこにいても、地球の裏側の情報を知ることができる。だけどそれは、飢餓に苦しむ人が、先進国の食生活を見ることもできるということ。暴飲暴食、さらには食べ残したものを捨てる人たちを見て、彼らはどう感じるか分かる?」

 何故、捨てるくらいなら自分たちに分けてくれないのか!? 言葉は通じなくても、そんな憤りが表情から伝わってくる。

「ちなみに、この中央アフリカでは、医療などの人道支援にやってきた人もテロの犠牲になることがあったらしいわ。気の毒だけど、先進国からの来訪者に、全ての怒りをぶつけたと考えられるかもしれないわね」

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過去――あの肉を食べるまで

 タイムマシンは、僕ら二人を乗せて夜明け前のある場所に運んだ。

「ここは?」

「アメリカよ。九月十一日ね」

 もっと昔……それこそ、江戸時代くらいにタイムスリップすると思っていたが、少しだけしか時間を遡らないとは意外だった。

「あ、牛の鳴き声が聞こえる」

「ここには、牛を飼っている畜舎があるのよ」

「畜舎!?」

 僕は不審に思った。肉牛とは牧場で飼っているものだと思っていたからだ。のんびり草を食み、その中から何頭かが肉にされていくと考えていた。

「それは現実を知らない無知な見解よ。その眼に焼き付けるといいわ。実際は、想像をはるかにこえる残酷な方法で、牛は殺されているのよ」

 畜舎には鍵がかかっているようだ。しかし、結衣がタイムマシンの操作パネルをタッチしたら、あっさりと開いた。

「なんで鍵がかかっていたか、わかる?」

 何気ない質問をする結衣。

「さあ?」

「部外者に見られないためよ。その残酷さを見たら、肉を食べたくなくなるから」

 僕は息をのんだ。それほどまでに屠殺の現場はひどいのだろうか?

 

 建物の中に入ると、異様な光景が目に飛び込んできた。

 牧場でなく畜舎で牛が飼われていると知ったが、せいぜい柵の中に入れられ、ゆったりと生きていると思っていた。しかし見たものは、不自然に太った牛が、小さな柵の中に四~五頭入れられている姿だった。歩くこともできないくらい狭く、太った胴体に比べて足は細く、立っているのがやっとの様子だ。その柵が、何万もあるようだった。

「これじゃ、まるで工場じゃないか」

そう、生き物を世話する場所ではない、無機質な物品を製造する工場だ。

「あれ見て」

 結衣が言った方を見ると、後脚をロープでつるされた牛がいた。血まみれなのを見るところ、屠殺されたばかりなのだろうか?

「かわいそうに……」

「よく見てよ。あの牛、まだ死んでないわよ」

「え?」

 目を凝らした。確かに、痙攣しているようだ。すると、作業員らしき男が銃で牛の頭を打った。しばらく激しく痙攣して、ついに動かなくなった。

「これからあの牛は解体されていくのよ。あなたが食べた肉は、もしかしたらあの牛なのかもね」

 今、一番聞きたくない言葉だった。

「彼らを、助けることはできないのか」

「何言っているのよ。ここには、何万頭もの牛がいるのに、全部助けられるの? それに、一頭だけ助けたところで、何になるのよ」

 理屈では分かる。しかし、何かせずにはいられなかった。僕の中の罪悪感が、そうさせたのだろうか。

 気がつくと、体が動いていた。すぐ近くにあった柵を開けてしまったのだ。

Wait! What do you!?(待て、お前何をやっている!!)」

 近くの作業員が僕らに気づいたようだ。彼は、手に銃を持っている。

「逃げるよ!」

 結衣がとっさに僕の手を取り、畜舎の外に向かって走った。そして、そのままタイムマシンに乗り込んで過去の時代を去ったのだった。

 

「まったく、無茶するんだから」

 タイムマシンの中で、結衣があきれながらつぶやいた。あのまま逃げるのが遅れていたら、射殺されていたかもしれない。

「ま、気持ちはわからないでもないけど。それに、似たことをやった人が、外国にもいたみたいだし」

「え?」

「口蹄疫って知っている?」

 結衣の話によると、牛や羊、山羊といった偶蹄類に感染する伝染病らしい。感染力は強く、感染した動物は肉付きや乳の出が悪くなり、さらに、肉に大量のウィルスが残り、肉製品としての価値がなくなるという。

「だけど、この病気で動物が死ぬことはまずないのよ」

「じゃあ、逆に感染した動物は、屠殺されるのを免れるのか?」

 僕は期待を込めて尋ねた。

「その逆よ。感染力が強いから、発生した地域とその周辺の家畜は、殺処分されたの。まるで、火事の延焼を防ぐために、火元の周りの家を壊すようにね」

 耳を疑った。人間は、自分の食欲を満たすために家畜を殺す。家畜が病気になって、肉としての価値がなくなれば殺す。

「二〇〇一年、イギリスで口蹄疫が発生したとき、その地域の牛が大量に殺されたわ。でも、一頭の子牛が生き残ったの」

 その子牛は政府職員に処分されそうになったが、子牛の飼い主が拒んだ。さらに、メディアがこれを聞きつけ、時の首相に「殺すな」という抗議の電話が殺到したという。

「人間はね、本当は生き物を殺したくないのよ。古い時代では、その本心から目を背け続けていただけ」

 僕は少し救われた気がした。人間の罪深さを思い知った。が、その本心には、生かしたい気持ちがちゃんと横たわっているのだ。

「さて、次は現在に行くわよ」

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未来からの警告者

「結樹、また焼肉!?」

 馴染みの焼肉屋に入ろうとしたら、明日香が非難めいた声をあげた。付き合ってもうすぐ一年の僕らは、デートでは、二回に一回は焼肉を食べる。

「たまには、おしゃれなカフェで食事したい! 初めてのデートのとき、連れて行ってくれたじゃない!」

「ああ、そうだったね」

 男は、意中の女性にアプローチするときは、女性受けしそうな店をがんばって探す。が、付き合い始めたらところどころ手を抜き始める。

「今度連れていくから」

 そう説得して、僕は明日香を連れて店に入った。

 

「んー、おいし♪」

 明日香は、焼けた肉をほおばりながら満面の笑みを浮かべる。なんだかんだ言って満足しているじゃないか。

「結樹は、雰囲気は草食男子っぽいのに、意外と肉食男子だよね」

「そう?」

 確かによく言われる。のほほんとした性格は、両親が愛情かけて育ててくれたおかげだろう。

「あ、玉ねぎ焼けたよ」

「明日香、食べて」

 実は、僕は野菜がきらいなのだ。全く食べられないわけではないけど、好んで食べようとは思わない。

「お肉ばっかりだと栄養偏るよ」

 明日香は何でも食べるダイプなので、食べ物の好き嫌いは言わない。そんな人をうらやましく思う。

「ところで、長崎のお土産持ってきてくれた?」

「ああ、あるよ」

 大学のサークルの旅行で行った長崎。買ったお土産を取り出して明日香に渡した。

「ねえ、長崎って言ったら、普通はカステラじゃない?」

 不服そうな明日香の手に渡ったのは、小さな十字架のネックレスだ。

「似合うと思うから買ったんだ」

 僕はクリスチャンではないし、特定の宗教も信仰していない。しかし、このお土産はなんとなく惹かれて買ってしまったのだ。

「あーあ、カステラ……」

〈次のニュースです。内戦が続く中央アフリカ共和国で、民間人の大量虐殺がありました。実行犯は……〉

 テレビから昼のニュースが流れてきた。日本では戦争は七十年も前に終わり、平和に焼肉を食べられるのに、遠い国では、戦争やテロの脅威が後を絶たない。

「そろそろ出ようか」

 食事も終わり、会計を済ませた。おつりにもらった小銭のいくつかを、レジの横に置いてあった募金箱に入れた。どうやら、飢餓救済と戦争孤児の生活費に充てられるようだ。

「結樹、やさしいのね」

 暗いニュースを聞いた後だっただけに、明日香の笑顔にほっとさせられた。

 

「ただいま」

 自宅に帰ってきたのは夜十時過ぎだった。

 夕飯は、明日香の希望で和食にしたのだが、どうも物足りない。結局、インスタントラーメンを作って食べることにした。

 平日は夜遅くまで仕事で、土日も明日香とでかける日があるので、あまり自炊をしない。気がついたら、キッチン用の洗剤がなくなっていた。

 僕は、後回しにすると忘れることがあるので、先に洗剤を補充することにした。洗面所の下にある戸棚を開け、詰め替え用の洗剤を取り出して顔を上げた。すると、目の前の鏡に、明日香の顔が写っている。

「ん!?」

 一瞬、たじろいだ。彼女も自宅に帰ったはずなのに、ここにいるわけがない。瞬きをしたら、明日香の顔も見えなくなった。

「……疲れているのか?」

 アルコールは一杯だけ飲んだが、このくらいでは酔わない。幻覚を見るくらい疲れているなら、ラーメンはやめてさっさと寝ようか……。

「やっぱり食べよう」

 睡眠欲より食欲が勝った。洗剤を補充し、ラーメンの袋を開けて鍋を出した。

「ん?」

 妙だ。鍋が震えている。沸騰もさせていないのに震えるとは? いや、鍋だけではない。机に置いた腕時計やはさみも震えている。

 地震か? しかし、本棚は動いていない。金属だけが動いている。

 突然、部屋が白く光り、その中から大きな卵型の物体が現れた。

「うおっ!!」

 何だこれは? 僕が茫然としていると、その物体はゆっくり床に降りた。

 プシューという音がすると、中から声がした。

「はーやっと着いた」

「だ、誰だ!?」

 中から出てきたのは、一人の女性だった。

「あ、明日香?」

 僕は目を疑った。顔立ち、声、背格好といい、どう見ても明日香なのだ。

「明日香? 人違いよ、私の名は結衣」

 人違い? 他人の空似か? いや、そんなことはどうでもいい、とにかく、人の家に突然現れたこの女は一体誰だ?

「私ね、未来からきたの。大学の研究で、過去の時代を調べるためにね」

「未来!? じゃあこれはタイムマシン!?」

 子供の頃から見てきたSF映画やマンガにあった。しかし、それが実際に現れるなんて!!

「君、本当に未来の人か?」

「まあ、にわかには信じられないでしょうね」

 笑顔も見せずに答える結衣という女性。顔立ちは明日香に似ているが、無愛想なところは似ても似つかない。

「今日何日だっけ?」

「あ? 二〇XX年九月二十七日だよ」

 すると、その娘は腕時計を出してボタンらしきものを押した。ヴゥゥン、という音を立ててホログラムが現れる。

「今、午後十時半……二分後、頭をクッションでガードした方がいいわ」

「は?」

「けっこう大きめの地震がくる」

 とりあえず言われるままにクッションを頭に載せた。すると、二分後、床が揺れだした。

「ほ、本当に地震だ」

 かなり強い。震度四はありそうだ。本棚もグラグラ揺れ、上に置いてあった菓子箱が、僕の頭めがけて飛んできた。

 とっさにクッションで防いだ。これがなかったら怪我をしていたかもしれない。

「ね、これで未来からの来訪者って証明できたでしょう?」

 結衣は淡々と言った。確かに、信じざるを得ない。

「でも、なぜこの時代にきたんだ?」

 結衣はその問いには答えず、つかつかと僕に寄ってきた。

「な、何?」

「肉臭い……」

「は?」

 確かに、昼に焼肉を食べた。が、その後、ガムをかんでいるから、においはしないと思っていたのだが。

「私の生きる時代ではね、肉はほとんど食べられていないの。肉の臭いに慣れていないから、敏感になるの」

「未来では、肉を食べないのか?」

 僕は多少驚いた。欧米などの先進諸国では、肉食が盛んだし、日本でも戦後は、肉食を取り入れてきた。なのに、時代に逆行するように、未来では肉食が減っているとは?

「ええ、食べたらすさまじい勢いで糾弾されるわ。この時代には焼肉屋とかハンバーガーのファーストフードがたくさんあったと思うけど、そんな店もうないわよ」

「一軒も?」

「そう、一軒も」

 本当にそんなことが起こりうるのか? 野菜ぎらいの自分にとっては、肉は重要な食事である。未来では、僕はどんな食生活をしているのか?

「あなたはお肉好きなのね? 確かに、この古い文明の時代には、肉食が日常的だけど、その弊害が、あらゆるところに及んでいたのよ。戦争や地球温暖化、これ全部肉食が原因よ」

 そんな話は初めて聞いた。

「ちょうどいいわ、私、大学のレポートで、古い文明のことを調べているの。一緒に来てよ」

「な、来てってどこに……」

「この日から過去、現代、未来にタイムトラベルして、現実を見せてあげる。古い文明を生きていた人の意見を聞きたいからね」

 訳の分からないまま、とりあえず、タイムマシンに乗り込んだ。

 どうも面倒なことに巻き込まれたが、未来において肉が食べられなくなるというのは、自分にとって致命的だ。それに、この娘にも興味が湧いた。

 明日香にそっくりなこの娘は、一体何者だろう? 疑問を持ったまま、タイムマシンは時間旅行を開始した。

「いくわよ、まずは、今から数週間前へ――」

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